2004年09月19日

コミュニケーション

Bridge and Target の技術マニュアルには、この動物のトレーニング方法の技術が説明されているのだが、筆者は、このマニュアルの後の方で、相当数のページをさいて、用語の定義を行っている。

英語のそれぞれの用語を、論理展開の順を追って説明し、その次に、同じだけのページ数をさいて、用語をアルファベット順に辞書のように並べて、同じ説明文を掲載している。

これらの用語の多くは、行動分析主義による心理学で使われ、そこから展開している、昨今の犬のトレーニング法の中でもよく耳にする言葉だ。

reinforcer , punisher, operant conditioning, positive, negativeなどなど・・・
カタカナになおされ、また日本語の言葉に言い換えられ、犬のトレーニングに興味を持つ私達のまわりに氾濫している言葉群である。

確かに、筆者がこれらの言葉を、どのように定義しているかをきちんと理解しなければ、方法論の底に流れる思想を知ることはできないはずだ。

これらの言葉の、筆者による定義は、それぞれとても興味深い。

この技術マニュアルにおける 
positive の定義は「(その環境に)加える」であり、
それに相対する言葉としての 
negative の定義は「(その環境から)減じる」だ。

reinforcer       その直前の行動の頻度をあげるもの
punisher         その直前の行動の頻度を下げるもの
  筆者はpunisherという言葉は、感情的な誤解を引き起こし
  やすいので、 diminisherという言葉に置き換えたい
  (その方が論理的)と考えているようだ。

positive reinforcer    動物の行動直後に(環境に)加えられる
             ことにより直前の行動の頻度が増す、
              動物が欲するもの(こと)
negative reinforcer    動物の行動の結果として直後に(環境から)
             削減されることにより、直前の行動
             の頻度が増す、動物が嫌うもの(こと)

だから、もちろん、punisher にも positive と negative があるわけだ。

ん~・・・なるほどぉ~。

などと読んで、そのまま行動学の世界ネット上でさまよっていると、operant cinditioning から Skinner理論 に行き着き、さらに、行動学の日本語サイトに行き着いた。

そこでは、学術用語として、reinforcerは「好子」、punisherは「嫌子」という言葉で表現されていた。

犬のトレーニングの世界では、科学的な根拠に基づいた新しいトレーニング法として、operant conditioning についての説明や、positive reinforcerを使ったトレーニング法の有効性などが説明されることが多いが、この「好子」「嫌子」という言葉は、犬のトレーニングでは聞いたことが、私はなかった。

犬のトレーニングにおける行動学の理論と、それ以外の学術的な分野での行動学の理論とは、どこが接点で、どこが懸け離れているのだろう?
何が、どう、訳されているのだろう?

さまよっただけの理解なので、私が間違って受け取った部分はあるのだろうが、純粋に、興味は尽きない。



このマニュアルの筆者の Kayce Cover さんは、もし、自分が日本で、自分の技術を説明するという仮定の元、英語と日本語の語順の違い、そこにあらわれる英語圏と日本語圏の文化の違いについて、大変に興味があるという。

自分の話が、どのように伝わり、どのように理解され、どのように実践され、どのように、ヒトと動物とのコミュニケーションに反影されるのか?そして、動物が、きちんとそこから恩恵を受けるか?そんなことを、とっても気にしている。

動物が、きちんと恩恵を受け、ヒトの社会の中で生涯を全うできなければ、トレーニングの意味はないのだから・・・。

自分の母国語で説明する時でさえ、一番の基礎となる単語の相互理解を取ることに重きをおき、異文化圏で自分の提唱する方法論を説明するにあたって、その理解する、大本の言葉の成り立ちの違いに注目する。

コミュニケーションの原点に細心の注意を払い、実社会での結果を重視するという点において、動物のトレーニング、動物とのコミュニケーションに成功するヒトの、その成功の理由が、なんとなく解るような気がする。

at 13:17コメント(0)トラックバック(0)BnT  

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