2005年12月27日 15:47

ターンバック

前回の記事、観戦マニアで書いた条件は、実際には、いとも簡単にダダが身に付けた事、というわけではありません。

観戦/目で追う、のは、ボーダーコリーにとってはある意味本能的な衝動から来るものなので、そこから引き剥がす(終了)のは、それなりの方法と、時間と熱意(ハンドラーの)が必要になります。

かといって、ダダでは、問題行動と思える事にまで発展してしまうような大きな苦労をする事ではありませんでした。


ダダには、彼女が1才になるまで「フセ」「コイ」「マテ(ステイ)」しか教えませんでした。なかでも「フセ」だけは完璧にしようと思いました。この「フセ」は、「フセ&ステイ」でもあります。

そのかわり、2才になった時でも、ダダは、リードで優雅にお散歩など全くできず、がんがんひきまくり、飼い主の腕の筋肉は疲労で壊れ、関節は炎症を起こし、指は危うく骨折か、という状態でした。

この「フセ、コイ、マテ」は、シープドッグトレーナーのグレン・ジョーンズさんが、その著書 a way of life のなかで、シープドッグとしての練習を始める7~8ヵ月までに犬が知っているべきこと、としてあげている3つのコマンドです。とりあえずそれを私もやっておこう、ということで取り組んだのですが、これが大きな力となりました。


ボーダーコリーと暮す上で、シープドッグとしての彼等の練習や暮らしが参考になるのは、その中から、この犬達の特性やそこから発生する問題を知る事ができ、それに羊飼い達がどのように対処し、どのように生かし、どのように解消していったかが読み取れるからです。


ダダに教えた「フセ」は、一連の作業、たとえば一緒に走る、たとえばおもちゃの引っ張りっこ、例えば投げたボールのレトリーブ、の中に差し挟むかたちでの練習を重要視しました。服従訓練における「フセ」とは、この点が大きく違っています。

私にとって必要だったのは、手許にいる時、脚側にいる時、リードに繋がれている時にダダがきちんと「フセ」ができる事ではなく、私が物理的に彼女をコントロールできない時に、彼女が動かなくなるコマンドを徹底的に覚えてもらう事、だったからです。

さて、この一連の作業中(つまりは共同作業中)の「フセ」を彼女に教えた事は、フリースタイルを楽しむ上だけでなく、観戦マニアとしての最初の段階と、最終的な「観戦は飼い主との共同作業と認識すべし」という部分で、大きなプラス点となりました。


一番難しいのは、「はい、おしまい」で終了させる(/次の作業に行く)、という点です。

ジョーンズさんは、シープドッグトレーニングの解説のターンバックの練習の項で、この方法を書いています。

シープドッグトレーニングには全く詳しくないのですが、このターンバックは、一度集めてきた羊から引き剥がし、新しくアウトランをさせて他の羊を集めに走らせる時に使うコマンド、という事のようです。

集中して目で追ってきた羊から目を離し、しかも、終わるのではなくほかへ走る(ハンドラーのコマンドを聞く)、しかも、お仕事として意欲的に、というのは、やはり、ボーダーコリーには難しい事のようです。

ジョーンズさんは、「物理的に引き剥がす」という表現を使っています。


実は、私も、最初はダダを、物理的に対象物から引き剥がしました。集中してついて廻っていた黒ラブチャンから目を離せず、私の「コイ」のコマンドを聞かなかった時(コマンドが聞こえなくなっていた時)、「コイ」というと同時にダダについていたリードを持って、思いっきり走りました。走り、走り、走り走り、遊び、遊び、そしてまた、黒ラブチャンのところまで走り戻り、そして「フセ」。ダダが4ヵ月の時です。

次は、河原や公園でのサッカーボール。引き寄せられていくダダに「フセ」、そして、私もダダと一緒にサッカーボールに引き寄せられることにしました。ダダのとなりにしゃがみ込んで、彼女の首輪を持ち「フセ、よ、ダ-ちゃん、オリコウさんねぇ、面白いねぇ。」

共同作業という認識を彼女に持ってもらうために、まず、私の存在を、彼女の勝手な作業の中に割り込ませることにしたのです。

そして、「コイ」という言葉と共に走りながら彼女の目をサッカーボールから引き剥がし、そして、もう一度、ボールへと、「一緒に」走ります。これは、彼女がもっと大人になっていて、サッカーボール以外では、「コイ」が聞こえない事が無くなっていた頃です。一緒に作業するという事を、ダダはもう既に理解していたので、彼女は簡単にサッカーボール鑑賞マニアへと変身しました

最後が「アジ観戦」でした。


いずれにしろ、一緒にやる事は一緒にやめられます。コマンドでやる事は、コマンドでやめられます。共同作業に位置付ければ、やめる事は、いやじゃないのです。そして、最初の練習段階で、やめた後も楽しい共同作業が続く、というかたちで覚えてもらう事が重要でしょう。

物理的、強制的にこちらを向かせる事の是非は、命に関わるかもしれないボーダーコリーの本能的な行動の制御という点では、私は「是」と思います。そこには、フリースタイルでスピンをするかどうかという事と違い、犬の選択の余地はないのです。

強制的にこちらを向かせる是非などよりも、そこに「共同作業性」があるかどうかのほうが、ボーダーコリーのこの本能に根ざした行動を制御する上では、ずっと重要な事のように私は思うのです。
                                  kuro

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コメント一覧

2. Posted by kuro   2006年01月06日 16:28
やっほー、とこりん!
今年もよろしくお願いします。
1. Posted by とこりん   2005年12月30日 15:04
うちの市の保健所のおっさんに言ってやってください。
あんたはボーダーと暮らせないよーって。
うちの母が近所の犬に噛まれたとき、「うちのボーダーも誰彼構わず飛びかかっていく。これはもうしゃあないわ」と言うた人です。
シープドッグってなんでっかとか言いそうですわ(--;)。
あら。。。年末のご挨拶に来たのに愚痴ってしまったf(^^;)。
KUROさん、今年もたくさんありがとうございました。
また来年もまぁ~~いどっ!でよろPく(笑)。

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